
※千葉の町中を歩いているときに、ふと浮かんだ考えをまとめただけの記事です※
主任や課長のような役職者も、経営者や政治家も「無駄」を無くそうとする。
メディアや知識人も無駄の省略を呼びかけるからか、今や主婦や若者や子供も教師も無駄を省こうとする世の中だ。
ただ何事にも良い面と悪い面があるもので、「無駄」もそう。例外ではなく、良い面もあれば、悪い面もある概念に過ぎない。
しかも多くの物事の場合、「無駄」がなくなるほどに、困る人の数も増える。
分かりやすい例が「社員」
アメリカでは1980代頃から、日本では十年後の1990年代頃から、「無駄だから」と正社員や派遣社員、アルバイトなどの首切りが横行し始めた。
一度に千人以上のリストラを断行した企業もある。この場合、大勢の困る人が生まれたわけだ1。
音楽好きな若者の場合、「街中の音楽」もそうだろう。
「音楽を流しても店舗の集客には繋がらないし、近隣住民から苦情が来るときもある。流しても無駄」「今は不景気だし、ムダな経費を削減したい」といった理由から、どの街もどんどん音楽を排除し、多くの町から音楽が消えた。
「給与の額」や「予算の金額」も分かりやすい例と言える。
無駄と思える人間を企業から排除したら、その人物は会社から消える。
音楽を無駄だからと流さなくなれば、自分の知らない歌を知る機会が、ある人たちの中から消える。
給与や予算の額を減らせば、雇い主に対する忠誠心も愛着も消える2。
「無駄な物は買わない。無駄なものはやらない。だからまだ聴いていない音楽を聴かないし、不要な外出は控える。新しい事柄には挑戦しない。良い結果が予想できないものには手を出さない!」と、本人が決めた場合もそう。
新しい物を得られる機会はもちろん、新しい経験を得られる機会も減ったり、なくなったりする。
つまり無駄の排除は推し進めると個人も経営者も、税収が減ってしまうと追い詰められる政治家も困る事態になる。
「無駄」が生み出していた給与や経験や忠誠心や愛着や新しい経験。それらが生み出していたものが日本人から消えると、庶民から裕福な政治家まで困る事態になる。国が成り立たなくなる場合もある。
結局のところ、「無駄」とは「完全に存在」なものでも、「消滅させるべきもの」でもない。
無駄にも存在意義がある。
それなのに個人も無名の経営者も著名人も、往々にして無駄を削ろうとするから、街中からも会社の中からも組織の中からも色々な物が失われ、空っぽに近くなっている。
あなたのお家の中や街中も、そうなのではないだろうか?
もしそうなら、少なくともあなたの身の回りや行動からだけは、「真に無駄な物3」以外の排除は控えてみてはいかがだろうか。
あなたがミニマリストであれ、節約家であれ、とても貧しい身であれ、ガンガン未知の分野に飛び込んでみてはいかがだろうか。
これまで決して立ち寄らなかった場所に立ち寄ってみても良いし、これまでスルーしていたお仕事や分野に挑戦してみる手もアリだ。
色々な物が得られて、いずれ「あ~、これは無駄ではなかったんだな」と思えるはずだ。
【注記】
- 首を切られた人は来月以降の収入が消えるため、多くの場合、追い詰められる。雇用保険や生活保護という名の「人様のカネ」に手を付ける者も出てくるし、消費も落ち込む。
リストラは、された側が素晴らしい転職先なり新天地なりを見つけれなかった場合、得をする人間は「皆無」 ↩︎ - 経営陣が人員も給与も、可能な限り削る会社に勤めた経験がある。
給与はもちろん、有給を取った従業員に支払う額も最小限だったの中小企業だった。5年ルールに達する直前に、アルバイトやパートを雇い止めする行為も平然と行われていた。
この会社は当然のように社員からは距離を置かれていた。本社の移転をお祝いする会の席で、それが鈍感な私にもハッキリと分かった。
お祝いの席にはほぼ全従業員が参加していた。アルバイトから経営陣まで顔を揃えていた。
そのような席で社長が本社移転を喜び、これからも事業を邁進させたい旨を語り終えたとき、参加者はシラけた顔で乾いた小さな拍手をするだけだった。
ちなみに私はスピーチを聞き流していた。会社の将来に無関心だったからね。今もだけど。
この日から数年後、私はその会社にいる必要を感じなくなったので、あっさり仕事を辞めた。会社を切り捨てた。その会社の経営者が他の人達にそうしているように。今勤めている人たちも恐らく、私や会社のやり方にならうだろう。
※過酷な勤務先に、人は何を思い、どう接するのか。
まとめた本を読みたい方は以下をどうぞ。
いずれも古い本だけど、読みやすくて分かりやすいのでオススメ。
①「窒息するオフィス 仕事に強迫されるアメリカ人 」
ジル・A・フレイザー (著), 森岡 孝二 (翻訳)
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②「ハードワーク~低賃金で働くということ」
ポリー・トインビー (著)、椋田 直子 (翻訳)
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③「ニッケル・アンド・ダイムド -アメリカ下流社会の現実」
B.エーレンライク (著)、曽田 和子 (翻訳)
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④「ルポ“正社員”の若者たち: 就職氷河期世代を追う」
小林 美希 (著)
https://amzn.to/3zibvh7 ↩︎ - 多過ぎる贅肉、他人をイジメる癖、ダラダラと思い悩む時間など。 ↩︎